指定席を奪うな、譲るな

はじめに、ここで言う「指定席」は、座席を指定する形式のものすべてを指す。

インターネットの記事や質問サイトでよく見るが、本当にいるんだな。座席指定券や指定席特急券を持たずに指定席に座る人、座ろうとする人。それも「子供がいるから」「高齢者だから」という言い訳をつけて。私自身、実際に経験したことはないが、結論を言うと、それはルール違反だ。いや、そんなことは当たり前だし、言わなくても分かるだろうが、決して例外はない。いかなる場合においてもタダで指定席を利用することは許されない。

本記事では、こういった指定席を奪う人が出現しやすい新幹線や在来線特急に視点を向けることにする。

まず、指定席特急券が何なのかを理解するべきだ。特急料金とは、速さに対して支払う費用だ。
考え方としては、自由席特急券の場合、どの座席に座るかという自由の他に、座席に座るか否かという自由もある。早い話、自由席特急券は、特急料金のみ、つまり速さのサービスのみを保証するため、座席に座らなくてもいい。
一方、指定席特急券は速さのサービスに加えて、「座席の利用を保証する」ものである。無論、自分が座るはずの座席に他人が座っていたら、それは権利の妨害だ。
有料のサービスを無料で利用出来ないことぐらい、小学生でも分かる。少なくとも、JRには指定席を無料で利用出来る例外規定はない。

指定席特急券を持っていないにもかかわらず、指定席に座ろうとする人は子連れや高齢者であることが多く、故に「子供がいるから」「高齢者だから」という理由で座席を譲らせようとする。彼らは完全に「優先席の理屈」で話を進めようとしている。
自由席はともかく、指定席はそれ相応の料金を払った者が利用出来る座席である。そもそも新幹線や在来線特急には優先席(の概念)はない。お金を支払う以外に座れる条件などないのだ。

「譲る人が納得してもダメなの?」

先ほど言ったとおり、タダで指定席を利用することは例外なく違法行為だ。ルールに逆らうことは違法行為だが、違法行為を斡旋することもよろしくない。指定席を譲った結果、譲られた人が車掌にルール違反だとバレて、一生恨まれるかもしれない。法律の種類によっては、違法行為を斡旋することさえ違法行為であるものもある。

「ならその場で直接お金を払えば済む話じゃん」

と、簡単にそう言う人もいるが、お金を払ったところで座席を利用する人であることを証明するものを必ずしも持っているわけではないことを忘れないで欲しい。その証明するものとは、料金の支払いではなく、指定席特急券だ。

例えば、私は指定席特急券を買って東京~名古屋を乗車し、Aさんは自由席特急券を買って私が座るはずの指定席に座り、東京~新大阪を乗車するとしよう。
本来ならAさんは東京~新大阪の指定席特急券を持っていなければならない。しかし、私が座るはずの指定席を東京~新大阪で利用するための料金を私に支払ったところで、私が持っている指定席特急券は東京~名古屋だ。これをAさんに渡しても、Aさんが東京~新大阪の指定席利用者である証明にはならない。

お金を支払えばいいという話ではない。

お分かり頂けただろうか。ルールは守るべきということを。指定席に座りたいなら、指定席が空いている内に事前に予約して料金を払え。車内で本人と直接取り引きするなど、後出しじゃんけんもいいところだ。